犬猫の診療

当院の麻酔管理

痛みを伴う治療や手術を行う場合、全身麻酔が必要になります。
以下に当院での麻酔に関する前検査および麻酔中の管理について説明致します。

●麻酔前の検査の必要性

ある程度年齢の経過した犬猫で麻酔が必要な場合、麻酔の前に検査をする必要があります。潜在的に肝不全、腎不全、心不全、貧血などの異常が発見される場合もあるので、事前に血液検査やレントゲン検査などが必要になります。血液検査では血球と生化学の検査を行います。血球で貧血、生化学で肝機能、腎機能などを検査します。(検査項目は症例により異なります)

【状態により】
犬 2歳以上;血液検査
  5歳以上;血液検査・レントゲン検査
猫 5歳以上;血液検査
屋外飼育の場合ウィルス検査(猫白血病、免疫不全ウィルス)が必要な場合もあります。(場合によりレントゲン検査)
※疾患によっては、超音波検査が必要な場合もあります。

●血液凝固検査

血液が止まる止血のメカニズムはかなり複雑です。当院では全ての手術の当日に、ちゃんと出血が止まるのかどうか(内因系、外因系の凝固因子に異常がないか?)全ての手術の際に血液凝固検査を薦めています。
■PT:プロトロンビン時間/APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間
■血球:RBC(赤血球数)、HGB(ヘモグロビン)、HCT(ヘマトクリット)、PLT(血小板)など
※犬ではまれに、血小板減少(5万以下)で血液が止まりにくい疾患もあります。

●麻酔の種類

【注射麻酔】
麻酔の覚醒が非常に悪く、また個体差があります。健康な場合は良いかもしれませんが、状態が悪い場合や大きな手術の場合はガス麻酔のほうが良いでしょう。

【ガス麻酔】
短時間効く麻酔薬を静脈から投与し、気管チューブを肺まで挿管し、ガスの麻酔薬で維持麻酔をします。マスクでは麻酔濃度が安定しないのでチューブを挿管します。手術や処置が終わり、麻酔を中止すれば数分で覚醒します。動物の状態があまり良くない場合には当院では全てガス麻酔を選択しています。

●麻酔中のモニター管理

最近では犬猫ともに高齢化の傾向にあります。よって何かしらの持病を持って望む麻酔処置や手術のケースが多く、麻酔中のモニター管理が必須となってきています。以前は麻酔中に心電図のみだった管理も、最近では以下の項目を管理することにより、より安全に処置および手術を行います。

モニター内容:心電図・心拍数・動脈血酸素飽和度・呼吸数・体温・ チューブ内の呼気/吸気の炭酸ガス濃度と麻酔ガス濃度等

これらのモニターにより、例えば動脈血酸素飽和度が低下したり呼吸数が減少した場合などでは人工呼吸器で補助呼吸をさせたり、呼気/吸気の麻酔ガス濃度や心拍数で麻酔を調節したりします。麻酔深度には個体差があるので、より適切な濃度を維持するようにします。

●術中管理

当院では、手術にあたって出血し易い手術部位や症例によって電気メス、レーザーメス、ラジオ波メスを使い分けし、手術中の出血量をできるだけ少なくし、かつ通常のメスでの手術では止血に時間がかかるのをこれらの医療器具の使用により手術時間を短縮するよう努力しています。その他、麻酔中の体温低下を防ぐため温水循環ヒーター(Tポンプ)を使用しています。(通常のヒーターでは、長い手術では低温やけどの発生の危惧があるので、その心配がない温水循環ヒーターを手術の際には必ず使用しています)

●術後呼吸管理

手術後、呼吸が悪い場合は、小動物用ICU装置で、温度・湿度・酸素を管理することもできます。(最近では犬猫の高齢化に伴い、慢性心疾患や慢性肺疾患がある動物で手術が求められるケースが多くなっているのでこのような医療器具が絶対的に必要になります。)