犬猫の診療

避妊手術

●避妊手術による病気予防の考え

◎雌犬の場合、1回目の発情前に避妊手術をした場合に乳腺腫瘍の発生率は0.5%、1回目と2回目の発情の間に避妊手術を行なうと8%、2回目以降はあまり変化がなく4匹に1匹で乳腺腫瘍が発生すると言われています。
原因はホルモンが関与していると言われています。ほとんどは徐々に大きくなる乳腺腫瘍ですが、一部では乳癌になる場合もあります。
手術では犬の年齢、体力、腫瘍の大きさ、タイプなどにより片側全乳腺摘出、その腫瘍だけの摘出などケースにより手術法は違ってきます。

◎雌猫では乳腺腫瘍の発生率は犬ほど多くはないものの(統計は不明)発生した場合95%以上は悪性(乳癌)です。

◎また、犬猫の雌では、5歳以上で子宮蓄膿症の発生が多くなります。
手術をしていれば発生はありません。
犬猫ともに発情の後、約1ヶ月後に子宮の中に膿が溜まる病気です。軽度の場合は子宮内膜炎の場合もあります。陰部からおりものが出る、食欲なし、嘔吐などで来院するケースが多いです。

以上の理由で犬猫ともに雌の場合は、病気の予防として今後の交配予定がない場合は避妊手術を生後、2回目の発情の前にした方が良いと思います。

◎その他の利点

*猫では雄雌ともに発情がなくなり、発情時の独特の「泣き声」は出現しません。
*雌犬は生理出血で家の中を汚す事がなくなります。

◎犬猫の避妊・去勢手術は電話予約になります。
◎避妊・去勢手術は全身麻酔で手術を行ないます。雌の避妊は卵巣子宮全摘出を行ないます。
 雄の去勢は包皮の前方の皮膚切開でアプローチします。(出血が少ない)
◎避妊・去勢手術は1泊入院となります。

妊娠診断

●デジタル超音波による妊娠診断(生まれる前の胎児の心音も聞けます)

小動物臨床における超音波(エコー)は、ここ10年ぐらいで急激に普及し、現在ほとんどの動物病院で検査できるようになりました。
妊娠診断以外にもレントゲン検査、各種血液検査以外の検査法として病気診断として役立っています。
当院でも1995年度より超音波検査器具を導入しています。
※2005年に新型のフルデジタル型のカラー超音波の機種に買い替えました。(買い替えて現在のは3台目です)
※動物に接触させるプローブはセクタ型(心臓に良い)、コンベックス型(腹部内臓に良い)、リニア(皮下浅い部位に良い)の3タイプがあります。
※デジタル超音波は従来の超音波に比べ、画質が格段に向上しました。
※また、妊娠24日~28日以降の胎児では胎児の心音をカーソルを胎児の心臓に合わせることによって心音として診察室で聞き取れます(パルスドプラ法)。 これは妊娠胎児の状態を把握するのに役立ちます(特に帝王切開前に)。

●超音波(エコー)による犬猫の妊娠診断

◎妊娠期間

妊娠期間は品種により多少の違いはありますが、だいたい58日~63日です。

◎超音波(エコー)での妊娠診断

妊娠日数
  20~23日 妊娠嚢の確認(約1cm)
  24~28日 胎児の運動と心拍の確認
  34~45日 形態識別可能(妊娠33日から38日で胎児は約2倍になる)
※マイクロコンベックスプローブを使用しているので小型犬、猫では1cm以下の妊娠嚢でも検査で分かります。

◎エコーでの妊娠診断は交配後25~30日くらいで連れてきて下さい

*一番わかりやすい時期です。
*検査では仰向けになることが必要です。  
*特に大型犬で腹腔内脂肪が非常に多いものや、検査に非協力的な性格な場合は検査自体ができない場合も若干あります。
*動物の大きさ、腹腔内脂肪、検査時の動物のおとなしさにもよりますが、通常は小型~中型の動物では1cm程度の胎児はエコーで確認できます。

◎柴犬やハスキー

検査時にほとんどはそのまま検査できますが、柴犬やハスキーなど毛が粗いタイプではバリカンで毛を刈るのが必要な場合もあります。

◎3kg以下の犬

特に3kg以下の犬では難産の可能性があるので妊娠55日以降にX線検査で骨盤と胎仔の頭部の幅を比較してください。